'組織デザイン' を読んだ

組織デザイン という本を SNS などで何人かが読んでいたので気になって手に取ってみた。 全体通しての感想 今までの EM などの実務を通して断片的に感じてきた事が改めて整理されていた。 また、それについて新しい角度で書かれていたりなど発見がいくつかあった。 特にソフトウェアエンジニアリングに特化した本ではないものの、共通する事がたくさんあるということに気づけた。 読書メモ (メモの見出しと添字は適当に付けていて書籍とは関連無いです) 1. 調整と分業について 役割を分化させることを分業と呼び、それらの多様な役割の時間的・空間的連動を確保する努力のことを調整と呼ぶ p.14 どのような組織であろうと、合理的に運営されようと意図されているのであれば、これら二つの要素を備えようと努力しようとしているはずである p.17 分業を行うメリットについて書かれていて、主に以下の2つがあった。 各タスクを完了させるためのパラメータがそれぞれにあるとして、全てを満たす人材はほとんどいない。いても賃金が高い それぞれ1つのパラメータを満たす人材であれば現実的、かつ賃金も前者に比べて安い。なのでスケールアウトが現実的 これが「組織」を形成するモチベーションの元なんじゃないかなと感じた。 これを考えついたのはコンピュータの父とも呼ばれるチャールズ・バベッジというのも面白かった。 アルゴリズムでも分割統治法という考え方があるので、似たような発想なのかなと思った。 2. プロフェッショナルについて プロフェッショナルや熟練工を活用することでもたらされるマイナスもある。基本的にはプロフェッショナルの雇用は重要な競争源とはなりにくいという問題と、かえってプロフェッショナルと他の人々との間の統合・調整が難しくなる p.116 直感とは真逆で意外な視点だった、少しソフトウェア産業とは違う視点かもしれないと思った。 その一方で、スケールアウトや仕組み化・標準化しづらいという点から考えると理解しやすいかもと感じた。 そしてプロフェッショナルは自分の所属する組織よりも、自分の専門領域やそのコミュニティに対して忠誠心を持つので他の組織に移籍しやすいという点もあり納得感があった。 余談だけど、産業革命時にイギリスの熟練工のせいで工業化が遅れ、一方歴史の浅いアメリカは熟練工がいないので自動化に頼らざるを得ず、一気にライジングしたのと似てるのかなと思った。 3. ヒエラルキーを使った管理について ヒエラルキーには「上司による部下の支配」といったマイナスのイメージがつきまとうこともあるが、例外に対する対応に関していえば、辿るべきコミュニケーションの経路が固定されているだけで対応の内容は幅広く選択可能であるため、本来、ある程度の柔軟性を備えた調整メカニズムだと評価されるべき p.167 `調整に際して発生する例外に対しての処理機` という言語化に、改めて管理者の役割を再認識できた。 そしてそのためにある程度の Slack が必要で、それが調整弁として機能する。 調整にも予め可能なものとできないものがあって、前者に関しては標準化などで可能。 ただ、後者は監督者による例外処理などで対応するしかない。 管理者は例外処理の catch の方。 「なるほど、フラットな組織を設計したい場合には管理の幅を広くとれば良い」と考える人がいるかもしれないが、物事はそれほど簡単ではない。p.174 よくある 2-pizza rule や span of control などのマネジメントできる限界数の話がいくつかの指標で納得感ある説明がされていた。 例外の数が多い、例外の分析が難しい、例外の処理にかけられる時間が少ない、などのいくつかの制約条件があってその定数(人数)が決まってくるんだなと思った。 自分が忌み嫌っているタイプの秩序の下でやる気をみなぎらせられる人間は、滅多にいないだろう。だから本当はヒエラルキーの特徴そのものに問題があるわけではなくても、ヒエラルキーをみんなが嫌ってるが故に、みんなのモチベーションが低下し、ヒエラルキーのパフォーマンスが悪くなる可能性がある p.216 ヒエラルキーという言葉や概念自体が影響しているという話、トートロジーぽくて面白かった。 確かに例外処理の機構やコミュニケーションパスの固定化などメリットの方が多い気もするのに、なぜか嫌われていると感じるのはそういった背景もあるのかもしれない。 「スラック」とは「ゆるみ」とか「たるみ」のことである。組織ユニット同士が緊密に結びつけられているよりも、若干「ゆるみ」が設けられている方が、調整の仕事は楽になる。 p.223 An Elegant Puzzle: 2 Organizations のメモ でも似たような Slack についての話があった。 ...

2022-02-07 · 1 min · jarinosuke

メルカリ・メルペイでの4年間

メルカリ・メルペイを退職する 2020年9月末で最終出社となり、有給休暇を挟んだ後にメルカリを退職することに決めた。 入社したのは2016年5月なので、4年4ヶ月の間在籍していたことになる。(間に育休取得もさせてもらったので便宜上4年としている) 当初いわゆる退職エントリを書くつもりはなかったけれど、こういった時世ということもあり、社内・社外に沢山お世話になった方々がいる中で、挨拶もあまり満足にできなかったので書くことにした。 最終出社を終えて、毎日見ていたSlackが見れなくなり、こういう文章を書いてみてようやく少しずつ辞めたんだなぁと実感している。 このエントリは分の4年間の振り返りも兼ねた個人の日記。 改めて振り返ってみると、メルカリに入社した動機は大きく以下の3つであった。 自分や自分の周りが毎日触るようなサービスに携わりたい US 進出を本気で行っている 自分より優秀な人がたくさんいる環境 (一番の下手くそでいよう) 入社を決めた動機は全て正しかったと今でも思える。 そんな4年の経験で得られた一番のモノは、“なんとかやっていく"力だろうと思う。 急拡大する会社・サービスではなんとかしないといけないことが本当にたくさん起こる。 それは Get shit done なのかもしれないし、 Disagree and commit かもしれない。 とにかく"やっていく"しかない状況・環境によって"やっていく"ことができたよう思う。 やっていたこと 移行期にグラーデーションこそあれど、大まかにいうと最初の2年はIndividual Contributor/Tech LeadとしてSoftware Engineer(iOS)、残りの2年をEngineering Managerといった役割で仕事させてもらった。 IC/TL Mercari JP/Mercari US/Merpayという大きく3つのドメインで、主にプロダクト開発業務に携わらせてもらった。 Mercari USでは出品画面を作ったり出品画面を作ったりした。 最終的にはアプリの作り直しをやることになり、複数人で3ヶ月という短期間で望んだ。 iOSDC 2017で発表させてもらった時のスライド US 版 Mercari をまるごと1から作り直した話 Merpayではとても多い機能開発を、メンバーを採用しながら開発も並行で行い1年かけてリリースまで行った。 開発開始からリリースまで1年かかったのは自分の経験では初めてで、リリースの瞬間は今でもよく覚えている。 twitter EM Merpay開発開始から半年経ったくらいからEngineering Managerの業務をすることになった。 具体的には採用から評価・フィードバックまで、体系立てて色々当経験させてもらった。 そんな中で誇れるのは何といっても、優秀かつ多様なメンバーを採用することができたこと。 これには本当に恵まれていたなと今でも思っている。 2019年末には機会を頂いてEOF 2019で以下の発表もさせてもらった。 メルペイのエンジニアリング組織の変化と目指すチーム像 メルペイiOSエンジニアが「EMとしての1年半」で気づいた、チームに必要な3つの要素 #eof2019 2020年に入ってもOrigamiチームの合流や、リモート環境下でのマネジメントやコミュニケーションなどチャレンジングなことが続いた。 次とその動機 次 小さなスタートアップで、もう一度Software Engineerとして働く。 社員数も一桁で、ここまで人数が少ない会社は初めてで不安も無くはないが、熱量高く、楽しんでやっていく。 動機 チャレンジしようと思える(自身の興味のある分野|信頼ある知人のリファレンス|アップサイドの可能性のある)機会をもらったのが一番の動機かと思う。 と同時に自分自身としてもそろそろエンジニアとマネージャの振り子を振るタイミングと思っていた。 Engineering Managerを2年近くやらせてもらって、客観的な評価含め一定成果は出せたと自分で思えているのも、振り子を振り直す理由の一つになったのかなと思う。 個人的見解だけれど、いわゆるマネジメントのスキルはSoftware Engineeringに比べてより普遍で劣化速度も遅いと思っていて、もう少し年齢など含むステージ的に後でもチャレンジできそうと判断した。 逆にこのまま更に数年Engineering Managerを続けてやるという決断をした場合に、もう一度Software Engineerとして振り子を振り直せるかどうか怪しいと思ったのも、大きくはないが理由の一つとしてはあるかもしれない。 エンジニアとマネージャの振り子を強く信じているし、キャリアについても金融のポートフォリオと似たような所があると思っていて、 ...

2020-10-01 · 1 min · jarinosuke

‘An Elegant Puzzle: System of Engineering Management’ を読んだ

Summary An Elegant Puzzle: Systems of Engineering Management (English Edition) Yahoo, Digg, Uber, Stripe などの会社で EM/VPoE などの組織をリードしてきた(現在もしている) Will Larson @lethain さん。 エンジニアリング組織において発生する色々な課題に対して筆者が考える解決策を分かりやすく書いてくれている本になっている 以下は序文からの引用になるけれど There’s a saying that people don’t leave companies, they leave managers. Management is a key part of any organization, yet the discipline is often self-taught and unstructured. Getting to good solutions for complex management challenges can make the difference between fulfillment and frustration for teams, and, ultimately, between the success or failure of companies. ...

2020-01-24 · 2 min · jarinosuke